礫ヶ沢の鬼礫

礫ヶ沢の鬼礫

868 礫ヶ沢の鬼礫 1 sage 2005/12/12(月) 01:43:41 ID:/kR0P5H+0

あの後、礫ヶ沢でつぶておにをオカルト研でやりに行った。
実際鬼の礫を見つけてつぶておにをやってみると、不思議なことに確かに石なのにいたくない。
その後、「鬼の礫~」をやらずに石を持って帰って調べてみよう、そう言うことになって、石を持ち帰った。

ところがその帰り、夜の国道を走っているときに異変が始まった。

礫ヶ沢に行ったオカルト研はA、D(Cの知人)、E(教育学部の地学研究室)の3人。
石を持ち帰ったのはE。普段はやたらおしゃべりなのに、帰りの道中では殆ど口をきかない。
「まあ、疲れているんだろうな」、位に思っていた。
3人が帰りにコンビニに寄り、飲み物なんかを補充していると、Eが飲み物の他にカッターなんかを買っている。そのときは「おかしなヤツだな」、程度しか思わなかったんだ。
コンビニを出るとき、Eの影に角が生えているようにAには見えた。
ギョッとして見直すと、コンビニのガラスの影の具合でそう見えただけのようだ。
「つぶておにの話を聞いた後で、神経質になっているんだ」
そう思い直して車に向かったとき、車からDの悲鳴が聞こえた。
それはEがカッターでDに斬りつけたところだった。
Aは後ろからEを羽交い締めにして 「どうしたんだ!」と叫ぶと Eの首がぐるっと回り(そう見えたらしい)獣のような目でイヤな笑いをしたそうだ。
次の瞬間Aは太ももをEのカッターで斬りつけられて、その痛みでEを放してしまったそうだ。
Dはその間に車に乗り込み、ドアも閉めずにそのまま車で逃走。
Eは開きかけのドアに捕まり、車に引きずられていってしまったそうだ。
一人残されたAは恐怖に震えながらタクシーで家に帰ったそうだ。

後日、Aは大学で連中のことを聞く。
その日、Dの車は近くの陸橋で自爆事故、Dはそのときの怪我で入院中、Eはその日以来姿を見せていないとのこと。Aはその話を聞いて、 「次にEが来るのは自分のところじゃないか」そう思ってアパートに閉じこもっていた。

ことの顛末を聞いた俺は、実家に電話をかけて村の寺の名前を聞き、寺の住職に電話をかけようとした。
その間、Aはベッドの上で毛布にくるまってふるえていたのだが、突然悲鳴を上げた。
窓の外をみると、むちゃくちゃ汚れた男がベランダから部屋の中を覗いていたんだ。
目つきが尋常でなく、いやな笑い顔でぶつぶつ言っている。
その常軌を逸した姿を見たとき、俺の背筋は冷たくなった。
男は手にした石でガラスを割ると、ゆっくりと部屋の中に入ってきた。
俺たちはしばし呆然としていたが、そこは男3人、カッターを振り回す男相手に、椅子、ナベなどで立ち回り。何とかその男を取り押さえた時に、ドアの外から警官の声がしたんだ。
「こんな怪しい風体の男がベランダをよじ登ったりしてていれば通報もされるわな」
なぜか冷静に考えていた俺の脇では、Aが失神してしまっていた。

俺たちが捕まえた男は案の定Eで、心神喪失状態でどうなるかは分からないとのこと。
Aは実家に帰って、その後のことは知らない。
寺の住職に電話をしたら、俺がこっぴどく叱られる羽目になった。
後は任せてもう関わるな、と釘をさされた俺は、正直あんな大立ち回りを演じるのはいやなので
住職の言葉通り、事件に関してはもう触れないようにしている。
たまにBとCで飲むときに少し話すくらいだ。

ただ、ひとつだけ気になっていることがあって・・・

鬼の礫、その行方がどうなったか。

あのとき、Eを取り押さえたとき、部屋に鬼の礫が転がったはずだが、警官がやってきたときには石の姿は見えなかった。
いや、警察が押収していれば、住職が何とかしているだろうけど。
もし誰かが持っているのなら、今でもそう考えると背筋が寒くなる。
礫ヶ沢の鬼の礫には気をつけるように。

 

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