いもうと

いもうと

59: 名無しさん@おーぷん 2018/05/20(日)15:50:32 ID:8di

俺の家にいもうとが居て、いもうとと言っても人間じゃなくて、
何か赤ん坊くらいの大きさがある、照る照る坊主みたいな奴だった。

下の方のスカートみたいな部分を丸く結んだ感じ。まあつまり、『i』みたいな形の奴。
それを母親は「いもうと」と呼んでた。
俺がずっと小さい頃からそうだったから、幼稚園の頃まで俺は『あれ』が妹なのだと思ってた。
幼稚園にいる他の子で「妹がいる」と話す奴が居ると、あいつの家も『あれ』があるんだと思っていた。
俺の家の『いもうと』は、食卓に座ったり、ソファに腰掛けたり、家族として扱われているようだった。
食事時になると、母がそれを椅子の上に置いたりしてた。
そして、「いもうとが置いてある」みたいに俺が言うと、母はいつも怒った。
『座る』じゃないと駄目らしかった。

ある日。幼稚園で何かの拍子に、『妹』は普通『人間』だと知って、母に尋ねた。
「あれはいもうとじゃないよね?」みたいな風に。
そしたら母は猛烈に怒った。
「ふざけるな、何を言ってる。あれは絶対“わたしたちのいもうと”なんだ」と。
後から考えると変な言い方だった。
『わたしたちの』

こっぴどく叱られた後、それでも懲りず父親に同じ質問をした。
そしたら今度は、普段元気な父が、何か言いたいが言えないみたいな顔になって、
何も言わずに部屋にこもり、丸一日出てこなかった。

小3の時に、父が死んで三日もしない内に、母親と一緒に近くの山へ車で行った。
見晴らしのいい崖みたいな所で車が止まった。
いつも『いもうと』は外出しなかったけど、この日だけは車に乗ってた。
母は車から『いもうと』を降ろし、「あんたはここに居なさい」と言う。
何をするのかと思ってたら、
いもうとの首と胴体がくびれてる部分を、ばちんとハサミで切って、投げ捨ててしまった。
母はいつも『いもうと』を大切に扱ってたから驚いて、「いいの?」と訊くと、
「おとうさんが死んだから、もういいの」と言われた。

それから、母との間で『いもうと』の話は一切出なかった。
あれは一体何だったのか尋ねようとしたけど、先延ばしにしてたら去年母が死んだ。
この話、友人に話しても何が怖いのか訊かれる。俺自身は結構怖い。
何かの宗教とも思えないし…。何か解る人いない?いなさそうだけど。

 

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