すいません、うちの娘が

すいません、うちの娘が

309 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:04/06/24 01:17 ID:2bUeiwk6

私はその後、その女の子の母親と軽く世間話をしました。
天気がどうだの、学校がどうだの…とどうでもいい話なので省きますが。
母親も言葉少なですが普通に話していました。
女の子は藤棚のすぐ隣、私の背後にあるジャングルジムで遊んでいます。
そろそろ日も沈もうかという頃合い。
公園はオレンジ色に染まりつつありました。

私はふと、当初の目的を思い出しました。
何故私がここに連れてこられたのか、です。
そこで「あの、どうして僕をここへ…」と問いかけました。
その瞬間です。

「チエっ!!」(※注:仮名)
と、もの凄い声で母親が叫びました。おそらくあの女の子の名前。
私はばっと背後のジャングルジムを振り返りました。
すると目の前に何かが落ちてきて鈍い音と何かの砕ける音が足下でしました。

ゆっくりと足下に視線を向けると
あの女の子、チエという女の子が奇妙にねじくれて倒れていました。
体はほぼ俯せなのに顔は空を向いています。見開いた目は動きません。
オレンジ色の地面に赤い血がじわじわと広がっていくのを私は呆然と見ていました。
警察、救急車、電話…などと単語が頭の中を飛び交いましたが体は動かなかったのです。

そのとき女の子がピクリと動き、何事かを呟きました。
まだ生きてる!と私は走り寄り女の子が何を言ってるのか聞き取ろうとしました。

「…かあ…さ…」

お母さんと言ってるのか!?

私は藤棚を振り返りました。
ですが彼女の母親の姿はそこにはありませんでした。
そういえば…最初に叫んだときから母親はここへ駆け寄ってもきていません。
助けを呼びに行ったのでしょうか。

「お…いちゃ…」

再び女の子が呟いたので私はそちらの方を向きました。
大丈夫だから、お母さんが助けを呼んでくれるから、と
そんなことを女の子に言ったような気もします。
でも気休めです。どう見ても首が折れているようにしか見えませんでした。
私は今ここにいない彼女の母親に怒りを覚えました。
「おか…さんが……よんで…か…」女の子はまだ呟いています。

……おかあさんが呼んでるから…?

私は上、ジャングルジムを見上げました。

そこにはさっきの母親がぶら下がっていました。
濁った目、突き出た舌、あまり書きたくない。死人の顔です。

そして母親の外れた顎がぐりっと動き、
「すいません、うちの娘が」

あとはあまり覚えてません。
私はその時に気を失ったのだと思います。
私は気づくと夜の公園で呆けていました。
そのジャングルジムはその後取り壊されたと記憶しています。

 

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