ブラックジャックの家
587: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/16(日) 22:58:50.97 ID:dRcfxrh60
もう10年以上前だし、時効(?)だと思うので投下
当時俺は高校生で、地元の海沿いの高校に通ってた。
そんなに綺麗なとこじゃないし臭い町だったけど、シーズンになると仲間と一緒に海で遊んでた。
当時はいわゆるDQNグループみたいな感じで仲間とつるんでて、学校サボって煙草吸ったりしてたヤンチャ盛りだった。
浜辺の横に岬みたいになってるとこがあって、そこの上に誰も住んでない家があったんだけど、
そこの2階に灰皿とかパイプ椅子とか持ってきてグループのたまり場みたいになってた。
立地が図書室で読んだブラックジャックの家そっくりで、みんな「ブラックジャックの家」とか「ブラックジャック」って呼んでた。
高2の8月に夏祭りがあって、まぁ毎年あるんだけど、その年はいつもと違った。
俺は同じクラスの女子Aと付き合い始めで、まぁ、初めてのデートだったんだ。
浴衣姿にめっちゃ興奮したの覚えてる。仲間には「今日は絶対ブラックジャック来んなよ!」って言っといた。 「今日は絶対ヤる!」って思ってたんだ。まぁ、健全な男子だから、普通だよな。
仲間も最初は茶化してたけど、約束してくれた。
駐車場でやるようなチンケな祭りだったんだけど、結構楽しかった。
確かフランクとタコ焼き食ったのは覚えてる。
まぁでも、頭ん中はもう「ヤる!」でいっぱいでw そればっか考えてた気がする。
Aもまんざらでもない感じだったし。
そんで、イチャイチャしながら、ブラックジャック連れてきたんだよ。
月が綺麗だけど曇ってて、雲に隠れたときはほとんど明かりがないからケータイ(ガラケー)で足元照らしてた。
2階に上がって、汚いパイプ椅子払って窓際に置いて、座らせてさ。オレも対面に椅子置いて、座らせて。(灰皿はあらかじめ隠しといた)窓が「右手に海、左手に町」てな方向向いてて、祭りの明かりと、海が見えて絶景でさ。Aも窓の外を見ながら黙って座ってて、すげぇいい感じだな、連れてきてよかったなって思ってさ。
でも、緊張してて、なんかどう切り出したらいいかわかんなくて、お互い固まっちゃったんだよねそこで。俺もそのときまだ童貞で、どうかしたいんだけど、どうしていいかわかんなくて。黙って外を見ながら座ってた。
そうしてたら、なんか視界の端を黒い影がサッと動いたような気がして、それが窓の外だったんでちょっと気になって体を乗り出したんよ。
チラッと影が、ブラックジャックの入り口の方に向かってくのが見えたんだよ。
建物の入り口が、今いる2階の窓の真下で、その影が建物の入り口に向かって動いたのが、チラッと見えた。なんだろうと思ったんだけど、窓の真下で真っ暗だから何も見えなくなって、なんだったんだろうって思ったけど首引っ込めたんだ。
Aが「どうしたの?」って聞いてきて、そしたら
ガタガタガタガタッ
って入り口の引き戸を滅茶苦茶に開けようとする音が聞こえてきて。
そこの入り口は普通の引き戸だったけど、縦に上下するタイプの鍵がついてたから、入ったときに閉めてたんだ、ヤってる最中に邪魔が来たらヤだなと思って。
Aと目が合って、部屋の暗がりに目が少し慣れてたんだけど、Aの目はめっちゃ怯えてた。
俺はなんとなく、「仲間の誰かが冷やかしに来たのかな」って思って、シーッて指を立てて、黙ってた。
これで下の音がしなくなったら、「ビビった~」とか言いながら、緊張ほぐれていい感じになれるかも、みたいな変な安心感というか、状況が動いて嬉しい気持ちが半分あった。
しばらくしたら、引き戸の音が止んだ。Aは緊張したまま、向かいあって椅子に座って、膝に置いた指が浴衣に食い込んでた。
ヒタヒタヒタと窓の下から足音が遠ざかっていく音が聞こえて、もう帰ったのか?と思った。
頃合いを見て声を出そうと思ったら、
ガチャ
って扉が開く音が下から聞こえた。「え?」って声が出そうになった。
その家は普通の民家だったんだけど、1階は風呂とトイレと居間と個室と、台所があった。
2階に登るのが面倒な時は、1階の台所で煙草だけ吸って帰る事もあったんだけど、
台所には、勝手口があった。そこを開けたんだ、と、気づいた。
階下の足音がドスドスドスドスッと動いているのが聞こえて、急激に「なんかヤバい」って気持ちが湧いてきた。
「コイツは仲間の誰かではない」って。
2階は狭い階段を上がったら廊下もなくすぐ左手にドアがあって、そこが今いる部屋になっている。2階の部屋はこの部屋だけ。足音が階段をドスドス駆け上がってくるのがわかって、体が咄嗟に動いて、扉の前に飛びついた。
背を向けて扉にもたれかかったら、
ドスンッ
と扉にぶつかる衝撃があって、体がちょっと浮いた。慌てて腰を落として、空気椅子みたいな体勢になって、扉を抑えた。
その後、2度、3度と衝撃が続く。鍵のない扉で、ドアノブが外側からひねられていた。自分がどいたら、扉が開いてしまう。Aは椅子のあった所に立ってて、暗くてよく見えなかったけど、浴衣の袖で目元を拭いてたので多分泣いてたんだと思う。
ドスンッドスンッと衝撃は何度も続いて、扉一枚はさんですぐそこに何かがいる気配がするのに、声は全く聞こえなかった。正直生きた心地がしなかった。「どうしようどうしよう」と思っていたら、開け放たれたままの窓に気づいてAの顔を見ながら顎で窓を差した。
んで、何度もうなづいて見せた。今思えば、なんでこんな事したのか俺にもよくわからん。
Aは最初少し躊躇していたけど、扉はガンガン叩かれるし、俺もヘドバンみたいに首を縦に振りまくっていたら、Aは浴衣の裾を上げて、窓枠に足をかけて外側に身を乗り出した。
そのまま窓枠に手をかけて、パッと離したの見えた後、どすんという音が窓の下から聞こえて、少ししてからサンダルでぺたぺた走ってく音が聞こえた。
「よかった」と思ったと同時に、扉の衝撃が来なくなっている事に気づいた。顔の横にあるドアノブを見ても、もうひねられてなかった。
部屋は漫画みたいにシーンと静まり返ってて、窓の外から波の音が少し聞こえるだけで、静寂だった。俺は中腰で扉に寄り掛かったままだったけど、外の奴の気配はもうなくなっていた。
ただ、そこで俺は気づいてしまった。扉のすぐそばで息を殺して待ってて、今ここをどいたらそいつが入ってくるんじゃないか?
いや逆に、そいつが階段を降りて、目の前にある窓から這い上がってきたら、俺はどっちに逃げればいい?そう思ったら、背筋がゾワゾワして、脇汗がブワーッて湧き出てきた。
動くに動けなくなって、俺はドアに寄り掛かったまま、じっとしていた。